テクニカルEA化

一目均衡表の「雲抜け」をEA化する難しさ

一目均衡表の「雲抜け」は視覚的にわかりやすいが、EA化すると途端にダマシが増える。雲の厚さ、滞在時間、上位足の状況など、裁量が無意識に見ている条件をどう数値化するか。

一目均衡表の「雲(先行スパン1と2の間)」。
チャート上に広がるこの帯は、抵抗帯や支持帯として非常に視覚的にわかりやすい。

「分厚い雲を上に抜けたら、強い上昇トレンドのサイン」

これをEAにしようとする。
「価格の終値が先行スパン1と2の両方を上回ったらエントリー」

シンプルなロジックだ。しかし、ドンチャンチャネルやボリンジャーバンドのブレイクアウトと同じく、これもそのままでは機能しない。

EAにすると、「雲を抜けた瞬間に戻されて損切り」「雲の中でのもみ合いで往復ビンタ」という地獄のようなバックテスト結果になる。

裁量は「雲の厚さ」を見ている

なぜ裁量では機能して、EAではダメなのか。

裁量トレーダーは「雲を抜けた」という事実だけでなく、「どんな雲を抜けたのか」を無意識に見ている。

ペラペラの薄い雲を抜けても、あまり信用しない。分厚い雲を時間をかけて抜け切った時、「これは本物だ」と判断する。

しかし、EAのコードに「価格が雲の上に出た」としか書かなければ、EAは雲の厚さを気にしない。1pipsしかない薄い雲(捻れの付近など)をヒゲで抜けただけでも、全力でエントリーしてしまう。

EAに「雲の厚み」を教える

一目均衡表の雲抜けをEAで機能させるには、この「厚さ」を数値化してフィルターにする必要がある。

  1. 雲の厚さフィルター

エントリー時の先行スパン1と2の差(pips)を計算する。この差が「ATRのX倍以上(=一定の厚みがある)」の場合のみ、雲抜けシグナルを有効にする。

  1. 雲抜け後の滞在確認

他のブレイクアウト手法と同じく、「抜けて確定」してから数本様子を見る。すぐ雲の中に押し戻される「ダマシ」を回避するためだ。

  1. 遅行線の確認

一目均衡表の本来の使い方は、雲だけでなく5つの線すべてを見ることだ。最低でも「遅行線がローソク足を上抜けているか(好転)」を条件に加えないと、一目均衡表を使っている意味が薄れる。

雲の中は「休むも相場」

EA開発で特にやっかいなのが、価格が雲の中に入ってしまった時だ。

雲の中は方向感がなく、もみ合い(レンジ)になりやすい。ここでブレイクアウト系のEAが動くと、細かな損切りを連発する。

「現在価格が先行スパン1と2の間にある(雲の中にある)時は、新規エントリーを一切行わない」

このフィルターを1行入れるだけで、バックテストの無駄な負けトレードが激減することがある。

この記事のメモ

一目均衡表は、日本が誇る非常に優れたテクニカル指標だ。
しかし、5つの線が織りなす「時間論」や「波動論」まで含めた奥深い体系であり、その中から「雲抜け」という一つの事象だけを切り取ってEA化するのは、実はとても不自然なことだ。

EA化を通してわかるのは、「裁量で見ていたチャートは、実はとても複雑な総合判断だった」ということ。

雲の厚さ、捻れの位置、遅行線の位置。これらをすべて条件化していくと、コードはどんどん複雑になり、取引回数は極端に減っていく(過剰最適化に近づく)。

一目均衡表をEA化するなら、「すべてを完璧に再現しよう」とせず、雲を「環境認識のフィルター(雲の上なら買い目線)」として割り切って使うのが、一番現実的なアプローチだと私は思っている。

チェックリスト

FAQ

Q: パラメータ(9, 26, 52)は時間足によって変えるべきですか?
一目均衡表の開発者(一目山人)の理論では、これらの数字は日足を基準とした不変のものです。下位足(15分足など)で使うために数値を最適化する人もいますが、一目の本来の理論からは外れるため、安易なカーブフィッティングにならないよう注意が必要です。

Q: 雲が捻れる(先行スパン1と2が交差する)時はどうすればいいですか?
捻れの付近は雲が薄く、価格が抜けやすくなります(ダマシになりやすい)。そのため、「捻れの前後数本はエントリーを見送る」というフィルターを入れるEA開発者も多いです。

免責

本記事は個人の検証メモであり、投資助言ではありません。一目均衡表の解釈やEAへの実装方法は開発者によって異なります。